診療科・部門

麻酔科

概要

麻酔科では術中患者さんの意識を無くすだけでなく、術前から術後までの全身管理や術後疼痛管理を行っています。当院では常勤麻酔科医6名で年間およそ2000件の麻酔を管理しています。
手術前に、麻酔科医師が患者さんの既往歴やアレルギーの有無、身体所見、検査結果などを詳しく確認し、患者さんの状態に合わせて最適な麻酔法を選択します。必要に応じて手術サポート外来と連携し、リハビリテーションや口腔ケアなど術前からの全身管理も積極的に行っています。特に高齢の方の大腿骨骨折は、手術までの間に体力が落ちてしまわないように早期手術に取り組んでいます。
手術中は患者さんの血圧や心拍数などの全身状態を見ながら麻酔薬の内容や量を調整します。術中にいろいろな問題が発生した場合は迅速に対応します。
痛みの強い手術では術後3日間にわたって麻酔科医・看護師・薬剤師で構成された術後疼痛管理チームが回診を行い、質の高い術後鎮痛を行っています。

手術以外でも、ラピッドレスポンスチームの一員として院内の患者さんの状態が悪くなる前に速やかに介入したり、集中治療が必要な患者さんの全身管理や治療に携わっています。
各診療科と密に連携し、安全で安心できる周術期管理や治療を提供できるよう努めています。

スタッフ紹介

成瀬 睦子 (なるせ むつこ)
嘱託医師(常勤)
専門領域
麻酔
資格・学会
日本麻酔科学会(麻酔指導医)
日本臨床麻酔学会
日本集中治療学会
日本手術医学会
竹端 恵子 (たけはな けいこ)
第1麻酔科部長兼手術部長
専門領域
麻酔
資格・学会
日本麻酔科学会(専門医)
日本臨床麻酔学会
南 雅美 (みなみ まさみ)
第2麻酔科部長
専門領域
麻酔
資格・学会
日本麻酔科学会(指導医)
篠田 正浩 (しのだ まさひろ)
医師
専門領域
麻酔
資格・学会
日本麻酔科学会(専門医)
大西 麻希 (おおにし まき)
医師
専門領域
麻酔
資格・学会
日本麻酔科学会
日本臨床麻酔科学会
日本心臓血管麻酔学会
酒井 翔太 (さかい しょうた)
医師
専門領域
麻酔
資格・学会
日本麻酔科学会
日本臨床麻酔科学会

外来担当一覧

 
診察室1 午前 酒井 竹端 酒井 成瀬
診察室2 午前 当番医 当番医 当番医 当番医 当番医

診療内容

麻酔とは?

でも「手術を受けなければならない」となった以上、麻酔が必要となってきます。
もし、何の不安も覚えてなく、知らないうちに手術が終わっていて、全然痛くなく、目覚めてからも、意識ははっきりしていて、何日かたつと「はい、退院ですよ」と言われたらどうでしょう?
それを可能にしてくれるのが「麻酔」なのかもしれません。
とすると。「麻酔」はマイナスばかりではないかも…

ところで、「麻酔」の要素は一つだけではありませんが、絶対に欠かすことができないのが「無痛」です。

さてここで「痛み」を中心に考えてみます。
これは患者さんにとって、手術中は勿論、手術後も非常に重要なことだと思います。

では「痛み」とは…教科書には「組織に不可逆的な障害を与える寸前のところで感じられ、生体に必要不可欠な防御機能である」(兵頭正義著:麻酔科学、金芳堂)とあります。これを読むと「痛みって必要なんだな~」と思ってしまいます。確かに、これはこれで正しいのですが、手術中・後の痛みは(手術が成功しているのならば)全く必要ありません。

痛みのながれ 私達はどのようにして痛みを感じているのでしょうか?

例えば、

  1. 手に針がささる
  2. 皮膚の感覚受容体のその刺激が伝わる
  3. 末梢神経繊維によって脊髄に伝わる
  4. 脊髄内の上行経路を経て脳に伝わる
  5. 痛いと感じる

痛みを感じないためには

  1. 手に針がささらなければよい
  2. 皮膚の感覚受容体にその刺激が伝わらなければよい
  3. 末梢神経繊維が脊髄に伝えなければよい
  4. 脊髄内の上行経路を伝わらなければよい
  5. 脳に伝わらなければよい、あるいは伝わっても覚えてなければよい?

手に針がささらないようにする(手術を行う)ことを避けるに越したことは、
とりあえずその以下のところで痛みの流れが止まれば、「痛く感じない」ことになります。

麻酔の種類

ここで麻酔の種類について述べます。上記のどこかに作用すればいいのですから、色々種類があります。
麻酔を分類すると

  1. 全身麻酔…意識がなく、全身の痛みを感じない
  2. 局所麻酔…末梢神経に局所麻酔薬を作用させて無痛を得る方法
    1. 表面麻酔…粘膜表面に塗ったりする
    2. 浸潤麻酔…腰、肩など痛いところに注射
    3. 周囲浸潤麻酔…歯を抜いたりほくろをとったりするときに
    4. 伝達麻酔
      1. 硬膜外麻酔…後述
      2. 脊椎麻酔…下半身の比較的短時間手術(虫垂炎、足の骨折等)
      3. 神経叢ブロック…様々な種類があります
      4. 末梢神経ブロック…様々な種類があります

さて具体的に見てみましょう

手術です
どんな手術でも痛いものです。しかし手術中はしっかり麻酔をかけますので痛みは感じません。でも手術後の痛みに関しては、手術の部位、内容によって様々です。特に上腹部の術後の痛みをとるのは非常に難しい、と言われています。
ここでは上腹部手術の代表である胃切除術の麻酔をかけます。
何らかの理由(特に癌、潰瘍)で胃切除術が予定されました。血液検査、胸部レントゲン写真、心電図、尿検査、呼吸機能検査など一般の検査を受けます。
そして手術前日、麻酔科外来に呼ばれ、診察を受けます。今までの病気や手術の経験、血縁者での麻酔の異常事態の有無(特に異常な高熱を来たしたことがあるか?など)、アレルギーの有無などチェックされ、身体所見を診て、大きな異常がなければ、終了です。その後、食事、飲水などの時間など一般的な説明の後「全身麻酔と硬膜外麻酔で行います」と言われ、「えっ?昭和天皇と同じですか?」と思われる方、どれだけおられるでしょう?

全身麻酔とは?

全身麻酔の目的は、

  1. 患者が痛みを感じない(感じていても覚えていない?)
  2. 手術がやりやすい状況をつくる(患者は動かない)
  3. 患者の意識を消すことに加え、
  4. 手術に対する身体の反応を制御すると言えます。

現在の全身麻酔は様々な種類の薬剤を用いて(その特色を活かして)、上記の目的にかなうように行っています。
一般には、

  • ガス麻酔薬(笑気)…作用は弱いが、上記1)3)
  • 揮発性吸入麻酔薬…上記1)~4)
  • 静脈麻酔薬…上記1)〜4)
  • 麻薬…上記1)

麻薬と聞けば聞こえが悪いですが、痛みを取る作用は絶大であり、頻繁に使用します。
でも誰も麻薬中毒とかにはなりません。

  • 筋弛緩薬…上記2)

安楽死に用いられ、社会的にお騒がせした薬ですが、全身麻酔の際にはほとんど必要不可欠です

を用いて、全身麻酔を行います。

ただし、手術が終了したら、麻酔から覚醒する必要があります。
ここで問題となるのが「痛み」です。
全身麻酔から覚醒すれば、その作用がなくなるわけです。お腹を切って、再び閉じたあとが痛くない、とは誰も思わないでしょう。かと言ってずーっと痛いわけではなく、一般に手術の痛みは、手術直後~12時間後までがピークで以後、徐々に低下していく、と言われています。
昭和天皇が手術後、痛みで苦しまれた、とは聞いていません。昭和天皇の手術も上腹部手術でありました。
ここで、「硬膜外麻酔」がクローズアップされます。

硬膜外麻酔とは?

硬膜外麻酔は、一般の方にはあまり馴染みの少ない言葉と思います。しかし、上記の通り昭和天皇の手術の際にも全身麻酔と併用され、それによって手術後も無痛で過ごされた方法であり、私達麻酔科医にとっては日常茶飯事のように行う麻酔方法です。天皇陛下だから行われた、なんて思わないでくださいね。私達は一番いいと思っている方法かつ、一番慣れている方法で麻酔をするのです(勿論、時と共に変わっていますし、新しい方法に慣れるまでにも、時間は多少かかります)。

その「硬膜外麻酔」とは?
背中の真ん中、首からおしりにかけて触っていきますと背骨の一部が何センチかおきに触れますね(これは脊椎の棘突起と言います)えっ?触れない?ダイエットしましょうね。
この棘突起と棘突起の間を背中の皮膚から真っ直ぐ入っていきますと‥
皮下組織→靭帯→硬膜外腔→硬膜→くも膜→脳脊髄液→脊髄あるいは馬尾神経となっています。
硬膜外腔は側方および背側が広く3~6mmの幅を持ち、その内容は脂肪組織と血管網です。

硬膜外麻酔とはその名の通り、人体と硬膜の間にある硬膜外腔に局所麻酔薬や麻薬を投与して麻酔作用を得る方法です。局所麻酔薬や麻薬には作用時間があるため一般にはこの硬膜外腔に細いチューブを入れて、時間毎あるいは持続的に薬を入れます。そしてこの麻酔は手術が終了しても継続することができます。主な作用が「痛みをとる」ことだからです。本当は色々あるんです。

けれど…
さて、全身麻酔と硬膜外麻酔についておおよそのことがわかりましたか?

手術当日

手術当日、食べることは出来ませんが、透明な飲み物は手術室に来ていただく2時間前まで飲むことが出来ます。
時間になれば歩ける方は歩いて手術室に来てもらっています。
手術室に入ると血圧計、心電図等のモニターにつけて、横向きになります。消毒を行い、背中の真ん中(より少し頭側)あたりに痛み止めの注射がされます。その後、特殊な針(Tuohy針)を用いて、硬膜外腔に向かって針が進みます。この場所の確認については省略させてもらい、硬膜外腔まで針先が到達した後、細いチューブを入れます。チューブを固定し、再び仰向けになります。
酸素マスクがあてられ、点滴から静脈麻酔薬、筋弛緩薬が入れられると全身麻酔の世界に入っていくことになります。
手術が終了すると全身麻酔の世界も終わりますが、硬膜外麻酔の世界はまだ続きます。

術後疼痛との戦い

当院では、専用の容器を用いて持続的に硬膜外腔の局所麻酔薬と麻薬(モルヒネ)を入れるようにして、痛みをとるべく戦っています。

胃の手術(上腹部手術)等の場合は、その容器に、翌日朝、翌々日朝に局所麻酔薬と麻薬を追加し、更に次の日の朝に麻薬を一回注入した後硬膜外腔にいれたチューブを抜去します。

今のところこれで完全勝利をしたわけではありません。やっぱり痛いという患者さんはおられるし(動いたり、咳をすれば痛いという患者さんは多い)、局所麻酔薬の量、麻薬の量、副作用の問題(特に麻薬によるかゆみ等)等まだまだ問題は残っています。それ故まだまだ我々の戦いは続いています。

先行(先制)鎮痛(preemptive analgesia)
この言葉は麻酔科内ではありふれたものになっています。しかもかなりの期待が込められて。
何故なら「強い痛みが加わる前(手術前)に痛みをとる処置を行えば、手術後の痛みを予防できる」と誤解されているためです。これが本当であれば、かなり手術後の痛みをとることに貢献できる可能な方法、だからです。

例えば手術前(執刀前)に十分硬膜外麻酔をきかせておけば(全身麻酔単独よりも硬膜外麻酔の方がはるかに痛みをとる作用が強い)、手術後の痛みもかなり予防できる。となるわけです。

これは本当でしょうか?実は実際の場ではあまり肯定的な結果は得られていないのです。理由として手術は皮膚を切るだけでなく、手術中色々な侵襲というものが加わり、また障害された組織から化学物質などが放出され、それによっても痛みが生じるからです。

しかし、そういった概念がある以上行うことは意義があると考えています。そうして私達は「痛み」と戦い続けるのです。

最後に

「麻酔科の」業務は、各病院によって若干違っていますが、概ね

  1. 手術室における麻酔
  2. ペインクリニック
  3. 集中治療室における全身管理
  4. 救急治療

等があります。

これら全てを麻酔科が行うというのは、現在の麻酔科の現状からは難しく、各病院がそれぞれの特色を生かして行っていることと思われます。

この中でも①が最も基本的になるものです。当院でも①を確実に行うことが必須であると考えています。