概要
品質が認められた、検査結果の迅速な報告を目指しています。
個々を尊重しつつ、協力し力を合わせ、日々の診療を支えることを目指しています。
検査部は、生化学・免疫学・血液学・微生物学・輸血検査・一般検査・生理学分野の7部門、2課で構成され、専従医師・臨床検査技師25名(2023年現在)・業務員を含め27名で業務を遂行しています。 夜間・休日24時間体制で対応しており、日頃から正確なデータの迅速な報告、疾患に応じた検査の提供に努め、精度保証施設認証も受けています。
資格は臨床検査技師以外に各種専門の認定資格を取得しています。検査業務以外にも、医療安全管理委員会、感染制御チーム、抗菌薬適正使用チーム、輸血療法委員会、栄養サポートチーム、糖尿病教室などのチーム医療に参加しています。
資格等・学位の数
内容 | 取得人数 |
---|---|
超音波検査士(循環器) | 4名 |
細胞検査士 | 1名 |
国際細胞検査士 | 1名 |
認定血液検査技師 | 2名 |
認定微生物検査技師 | 1名 |
感染制御認定臨床微生物検査技師 | 1名 |
心電図検定(2級) | 2名 |
緊急検査士 | 4名 |
二級臨床病理技術士検査士 | |
微生物学 | 4名 |
循環器生理学 | 2名 |
臨床化学 | 1名 |
血液学 | 1名 |
病理学 | 1名 |
毒物劇物取扱者 | 1名 |
有機溶剤作業主任者 | 2名 |
特定化学物質及び四アルキル鉛等主任者 | 2名 |
精度管理責任者 | 3名 |
臨地実習指導者 | 1名 |
医療安全管理者 | 1名 |
Doctor of Philosophy | 2名 |
検査紹介
生化学検査課
緊急・生化学・免疫学検査
1.緊急検査

休日・夜間においても緊急検査に対応できるよう、救急休日の昼間帯は臨床検査技師2名体制で、夜間帯は1名体制で検査業務に従事し、主治医に検査結果を報告しています。
検査内容:血液ガス分析、生化学検査、血球算定検査、血液型検査、交差適合検査、尿一般検査、抗酸菌検査
2.生化学検査

血液中に含まれる様々な成分を分析し、それぞれの項目要素だけではなく、複数の検査項目の組合せで、病気の診断など治療の判断補助に利用します。
また、特徴として調べる臓器によって検査項目が異なります。
- 肝機能:AST,ALT,γ-GPT,LD,ALP,ChE,ビリルビン
- 腎機能:UN,クレアチニン,Na,K,Cl,尿酸,μ-TP
- 心機能:AST,LDH,CK,CK-MB
- 糖尿病:血糖,ヘモグロビンA1c
- 脂質異常症:総コレステロール,中性脂肪,HDLコレステロール,LDLコレステロール
3.免疫学的検査

もともと体内にない細菌や異物が侵入してくると、それらに抵抗する抗体という物質を作り、からだを守ろうとする働きがあります。
血清中に抗体があるかどうか、またどのくらいの量であるかを調べるのが 免疫(血清)学的検査です。
- 感染症:B型肝炎関連,C型肝炎,HIV,HTLV
- 腫瘍マーカー:AFP,CA19-9,CA-125,CEA,PSA
- 心筋マーカー:pro-BNP,BNP
- 免疫グロブリン:IgG,IgM,IgA,IgE
- 薬剤血中濃度:テオフィリン,ジゴキシン,カルバマゼピン,シクロスポリン,タクロリムス
血液学検査
1.血液検査

血液の中に含まれる赤血球、白血球、血小板の数やヘモグロビン濃度などを測定し体の状態を調べる検査です。自動血球分析装置によって測定が自動化されており、迅速に正確な検査ができます。
2.血液像検査(白血球分類)

血液中で認められる白血球には好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類があり、その割合を調べます。
白血球の種類
種類 | はたらき |
---|---|
好中球 | 細菌などの異物の除去や感染防御 |
リンパ球 | 抗体の産生、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞の排除 |
単球 | 細菌、腫瘍細胞などの除去 |
好酸球 | アレルギー反応、寄生虫の除去 |
好塩基球 | アレルギー反応 |





白血球分類も自動血球分析での測定が可能です。問題がない結果はそのまま報告しますが、異常がある時は血液塗抹標本を作成し、検査技師が顕微鏡で確認します。血液の病気(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など)が疑われる場合は、主治医に連絡し、血液内科への相談を促します。
3.凝固検査

出血した時に止血に関わっているのが「凝固因子」です。凝固検査では凝固因子の働きや血管の中での血栓形成を抑制する働き、できてしまった血栓を溶かす(線溶)働きなどを調べます。
凝固検査の目的
- 凝固系の病態把握:手術前の止血能の確認、播種性血管内凝固症候群の診断など
- 抗凝固療法のモニタリング:血液を固まりにくくする薬(ワルファリン、ヘパリンなど)の効果判定
- 先天性凝固異常症の診断
4.細胞表面抗原検査

血球の表面には、その血球に特徴的なマーカー(抗原)があります。これが「細胞表面抗原」です。急性白血病や悪性リンパ腫に代表される血液のがんで行われる移植治療ではすべての血球のもとになる「造血幹細胞」 の数が重要となります。造血幹細胞に特徴的な表面抗原であるCD34を測定することで、移植医療に貢献しています。
5.赤血球沈降速度

赤血球が重力により沈降する速度をみる検査です。赤血球の凝集のしやすさを反映します。血漿中に陽性荷電を有するフィブリノゲンやγ-グロブリンが増加すると赤血球沈降速度が促進することから、急性期蛋白フィブリノゲンの増加を反映する非特異的炎症マーカーとしての意義が特に高いとされています。
一般検査
「一般検査」とは?
血液以外の尿、便、その他材料(胸水・腹水などの体腔液、髄液、精液など)を調べる基礎的な検査を指します。
1.尿の検査
1)尿定性検査
尿の性状や成分など試験紙を用いて検査します。
さまざまな病態のスクリーニング検査のほか、治療中の病態把握や投与薬剤による副作用出現の確認に用いられます。
主な測定項目 | 考えられる疾患 |
---|---|
蛋白 | 腎疾患(ネフローゼ症候群・糸球体腎炎など) |
ブドウ糖 | 糖尿病 |
ケトン体 | 重症糖尿病など、ケトーシスを起こしたとき |
ビリルビン・ウロビリノーゲン | 肝臓障害 |
潜血(尿中の赤血球) | 尿路結石症、膀胱癌、糸球体腎炎など |
白血球・亜硝酸塩 | 尿路感染症 |
2)尿沈渣検査
尿中の有形成分を顕微鏡下で観察する検査です。
腎尿路系疾患の補助診断や経過観察に有効です。
当院では2023年に尿中有形成分分析装置を導入しました。
機械法と顕微鏡法を併用することで、検査の迅速化・省力化を図っています。

検査で検出される主な成分 | |
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血球系 | 赤血球、白血球 |
上皮細胞系 | 扁平上皮細胞、尿路上皮細胞、尿細管上皮細胞、卵円形脂肪体、異型細胞など |
円柱系 | 硝子円柱、顆粒円柱、ろう様円柱、赤血球円柱、上皮円柱、脂肪円柱など |
結晶系 | シュウ酸カルシウム結晶、尿酸結晶、ビリルビン結晶、シスチン結晶、コレステロール結晶など |
微生物系 | 細菌、真菌、トリコモナス原虫など |





2.便の検査(便潜血検査)

便の中に血液が混ざっていないかを調べる検査です。
大腸癌や大腸ポリープなど、下部消化管に関わる病気のスクリーニング検査として広く使用されています。
3.その他材料の検査
1)体腔液(胸水・腹水・心嚢液)検査
尿の性状や成分など試験紙を用いて検査します。
体腔(胸腔・腹腔・心嚢腔)にある液体を体腔液(胸水・腹水・心嚢液)と呼び、通常、健常人にもわずかに貯留しています。
増加した場合には、貯留する原因の究明と治療を目的として、針などで穿刺し排出された体腔液を検査します。
2)髄液検査
尿の性状や成分など試験紙を用いて検査します。
「髄液」とは、脳室や脊髄の隙間を満たしている液体のことで、中枢神経系を守ったり恒常性を保つなどの役割を果たしています。
髄膜炎や脳炎など、早期治療が重要な中枢神経系の感染症を診断するために欠かせない検査です。
3)精液検査

男性不妊症の診断や男性の泌尿器疾患における炎症症状の確認のために行う検査です。精液量、精子数、運動率、奇形率などについて「精液検査標準化ガイドライン」に沿って検査しています。
輸血学検査
2023年2月に輸血療法の安全性を保障する輸血機能評価認定施設 (I&A)になりました。検査部もその一翼を になっています。
1.血液型検査
ABO血液型はオモテ/ウラ検査、Rh式血液型はRhD抗原の検査をします。
2.不規則抗体検査
主に過去の輸血や妊娠によって産生された抗体で、輸血副作用の原因となる抗体を検出します。
3.交差適合試験

患者さんの血液と輸血する血液の適合性を検査します。適合と判定された血液製剤を輸血に用います。安全な輸血のための最終的な検査になります。
4.血液製剤の管理
輸血用血液製剤を血液センターに発注・入庫を行い、適切に温度管理された保冷庫で血液製剤の保管管理を行っています。患者さん本人から採血した自己血(輸血用)も輸血をするまで適切に保管管理しています。
血液製剤は血液型によってラベルが色分けされています。
【A型:黄色、B型:白色、O型:青色、AB:赤色】

赤血球濃厚液
慢性や急性の出血時や、貧血の改善に使用されます。

新鮮凍結血漿
血液を固まらせる成分の凝固因子が不足し、出血しやすい時に使用されます。

濃厚血小板
血小板の減少や、血小板が正常に機能しないため出血が止まらない時に、止血や出血の予防に使用されます。
微生物学検査
感染症(肺炎、感染性胃腸炎など)を調べるための検査です。感染症は微生物(細菌・真菌[カビなど]・ウイルス・寄生虫など)が身体に侵入することで起こります。当検査室では主に細菌・真菌検査を実施しています。
感染症が疑われる患者さんから提出された喀痰、便、尿、膿、血液などから原因微生物を検出し、その微生物に対してどのような抗菌薬が有効なのかを検査します。
微生物検査では、検体の取り方と保管の仕方によって検査の良否が決まります。場合によっては検体を何度か取り直していただくこともあります。ご協力をお願いいたします。
【主な検体材料と取り方(例)】
- 喀痰:黄色や緑色のものが検査に最適です。早朝、起床直後のものが良いです。
- 採取前にうがいをしてください。(口腔内を清潔に)
- うがいの後、咳とともに痰を吐き出します。(唾液の混入はなるべく避けてください)
- お渡ししてある容器(プラスチック)に採取してください。(ティッシュペーパーなどは入れないでください)
2)尿
- 出始めの尿は便器に排尿します。
- 排尿を止めずに中間部分の尿を採尿コップに採ります。
- 室温放置せず、直ちに検査室へ提出してください。
3)糞便
- 自然排便が望ましいです。
- 水洗トイレを使用する場合は水につかっていない部分に排便します。
- 親指程度の量を採り、採便容器に入れ蓋を閉めます。
【微生物検査の内容】
1.一般細菌検査
1)グラム染色(塗抹・顕微鏡検査)

患者さんから採取した材料をスライドガラスに塗布・染色し、顕微鏡で観察します。細菌の存在、数を確認し、染色性と形態から原因微生物の推定をします。また炎症の程度を把握し、緊急性を要する所見が認められた場合、速やかに担当医に報告します。
2)培養検査

臨床状況に応じた数種類の培地を用い、それぞれの培養環境(嫌気・CO2など)を整えて培養することで細菌や真菌の種類を調べます。培養検査は結果が出るまで2~7日程度かかります。(必要日数は原因菌の種類によって変わります。)
3)同定・薬剤感受性検査

臨床状況培養で感染症の原因となる菌が発育した場合、その菌種を同定します。さらに同定された菌に対してどの薬剤が有効かを調べる検査を行います。(薬剤感受性検査)
臨床上問題となる耐性菌にも迅速な対応を心がけています。
4)同定・薬剤感受性検査
- コロナウイルス抗原検査・PCR検査(鼻咽頭)
- インフルエンザ抗原(鼻腔・咽頭粘液)
- 尿中肺炎球菌抗原(尿)
- 尿中レジオネラ抗原(尿)
- CD抗原/毒素(糞便)
- ロタウイルス抗原(糞便)
2.一般細菌検査
抗酸菌とは結核菌を含む抗酸性の菌のことです。結核は若い人から高齢者まで年齢にかかわらず発症します。
また、空気感染によって人から人へ感染するため結核に気付かず周囲の人まで感染し、社会問題ともなっています。
1)塗抹検査:チールネルゼン染色(抗酸菌染色)

患者抗酸菌はピンク色、背景その他の菌は青色に染まります。
感染患者さんが入院時に院内へ持ち込みされることを予防するため24間体制で顕微鏡検査に対応しています。
2)塗抹検査:チールネルゼン染色(抗酸菌染色)
外部委託検査しています。(結果が出るまでの目安の日数:2-3日)
3)培養検査
外部委託検査しています。(結果が出るまでの目安の日数:4-8週)
3.病院感染防止対策
院内感染対策チーム(ICT)・抗菌薬適正支援チーム(AST)に参加し、病院内外の感染情報を積極的に発信しています。各種薬剤耐性菌(MRSAやMDRPなど)の監視を行いフィードバックすることでアウトブレイク防止など院内感染管理に役立っています。
生理機能検査課
生理機能検査
1.心電図検査

四肢と胸部に電極を付けて、電気的な面から心臓の動きをみます。簡便に短い時間で結果がでるため、心筋梗塞などの素早い対応が必要な疾患の検出にも役立ちます。短い時間の間ですが、不整脈の検出にも有効です。
2.負荷心電図検査

心電図・血圧計をつけて運動してもらい、心臓に負荷をかけて行う検査で、通常心電図だけでは分かりにくい狭心症や不整脈の診断、予後の評価を行うことを目的に実施しています。
3.ホルター心電図検査

不整脈や狭心症の診断を目的として、記録計を約1日装着して検査します。不整脈の診断に有意義な検査です。自覚症状とそのときの波形を比較することで、症状と不整脈や狭心症の関連を調べたりもできます。当院でお貸しする機種はシャワーすることが可能です。
4.心臓超音波検査

超音波を発する機械を胸に当て、心臓の形や動き、血液の流れを見る検査です。痛みを伴うことなく心臓の多くの情報を得ることができます。例えば、血液の逆流を防ぐ弁に異常がある「弁膜症」は加齢に伴い多くなっていきます。体を動かしたときの息切れや動悸など、気になる症状があれば積極的に検査をしてみましょう。
5.肺機能検査

呼吸の検査です。肺活量や吐く息のスピードを測定します。
咳き込む理由や息切れの原因が肺にないかの診断に有意義な検査です。健診では肺年齢等も報告しています。
6.脳波検査

頭皮に電極を取り付け、脳に流れる微弱な電気を記録して大脳の活動状態を調べる検査です。
てんかんや意識障害等の診断に役立ちます。
7.神経機能検査

糖尿病性神経症等糖尿病による神経障害の診断。整形外科領域で手根管症候群、肘部管症候群、重症筋無力症の診断に用いられます。耳鼻科領域の聴力検査の精密検査に用いられる聴性脳幹反応の検査も行います。
8.平衡機能検査

体の揺れや眼の動き、耳の機能などからめまいや体のふらつきの原因を調べる検査です。重心動揺検査、足踏み検査、指標追視検査、眼振検査などがあります。
9.ポリソムノグラフィー(PSG)

睡眠時無呼吸症候群の診断や重症度判定に用いられる検査です。脳波や気流センサー、パルスオキシメーター等を取り付け、睡眠中の呼吸の状態を調べます。